Photo by Claudia Gaiotto / https://www.flickr.com
イタリア旅行といえば、言わずと知れた美味しい料理やワイン、壮大な歴史を感じる遺跡や教会、オペラ、ファッションブランド、街を歩けば目にすることのできる美術作品を想像する人も多いのではないでしょうか。
今回私は、まだ日本人にあまり知られていないイタリアの魅力を体験することができました。その魅力をお伝えしたいとおもいます。
鼓動をかき鳴らすタンブレッロ
Photo by Agostino D’Ascoli / https://www.flickr.com
2015年の6月、イタリア人の友人を訪ねてはるばる東京からチョチャリア地方のパリアーノという、ローマから列車で1時間ほど南にくだった場所にある小さな町を訪れました。
友人はタンブレッロやギター、オルガネットと呼ばれる、綺麗な模様のついた小さなアコーディオンのような楽器をかき鳴らし、チョチャリア地方をはじめとする中央ー南イタリアの伝統的な音楽を演奏し、伝えていく活動をしています。
中でも6月には、パリアーノで聖ジョバンニを祀る盛大なお祭りで彼の伝統音楽のバンドが演奏するということで見学にいきました。
お祭りの当日は昼間からバンドメンバーが町を演奏しながら練り歩き、その軽快でどこか懐かしさを感じる音色に町の人々はみんな、道にでたり、窓から顔をのぞかせたり、お手製のジャーキーやワインを道行く人に配ったり、流れてくる音楽を心で聴いて、本当に楽しんでいる様子でした。
夜になると広場に大きな焚き火がたかれ、その炎を囲みながらステージ上ではコンサートがはじまります。タンブレッロは時に軽快に、時に力強く勇ましく叩かれ、ダイレクトに体の中心に伝わってきて、思わず踊りだしたくなりました。
魂の表現の踊り
Photo by Eric Melear / https://www.flickr.com
ふと周りを見ると、みんなが踊っています。老若男女関係なく、時に手を取り合い輪を作ってくるくる回転したり、二人で向かい合って互いの魅力を競い合うように踊ってみたり。その人が知らない人でも言葉が通じなくても、お構いなし。
ひとたび踊り出せば、同じ空間を楽しむ仲間としてすぐに受け入れてくれます。そこには上手も下手もありません。もちろん、日本の盆踊りのように基本の形はありますが、タンブレッロの音が魂に届いて、ひたすら感じるままに動きまわります。
それは何も、お祭りの場だけではありませんでした。なんでもない日の夜でも、誰ともなく音楽を奏で始めると、すぐに誰かが踊りだし、つられてみんなが踊り出す、そんな陽気な雰囲気が町中にありました。
サルタレッロという、イタリア語で「ジャンプ」を意味する言葉からできたリズムが聞こえてくると、弾むように打ち鳴らされるタンブレッロに合わせて、そこかしこで笑顔が弾んでいました。
都会生活では感じられない自然
Photo by Danilo Antonini / https://www.flickr.com
パリアーノには高層ビルや夜遅くまで煌々と電飾をつけて営業する商業施設はありません。ワインヤードや牧場が広がり、夜になると、月明かりと星が道を照らします。晴れた日の夜に少し高台に登りふと上を見ると、無数の星が光り輝いていました。
人工の光が届いてしまう東京近郊では、絶対に見ることのできない宝石箱のような光景でした。
宝石箱のようといえば、このパリアーノの町を隣の町から夜みてみると、暗い背景の中に、街灯や家の光が煌めいて、まるで町全体が一つのお城のような、そんな忘れることのできない美しさでした。
また、パリアーノから車で30分ほど山を登るとスビアコという滝があります。若葉の木々に囲まれて木陰の下を歩いて行くと、滝の麓で楽しそうに飛び込む子供たちの笑い声が聞こえてきます。
透き通るように澄んだ滝の水に、柔らかい若葉の緑が映ってエメラルドグリーン色になった滝は、見ているだけでほろほろと心の緊張が解けていくような不思議な癒しの力を持っていました。
まとめ
今回の旅は、現地を知り尽くした友人のおかげでうわべだけではないイタリアの魅力を体験することができました。
美しい街並みや美味しい料理はもちろんのこと、現地の人々の心を感動させるものと同じ空間を共有させてもらえたことで、私自身の感情も豊かになった気がします。
やはり、どんな文化も人が作ってきたもの。人と人とのつながりが温かく心地のいいものであることを実感できた、いい旅でした。